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吉川氏総長決定を伝える紙面

 

有馬総長の政策を引き継ぐ姿勢

 有馬朗人現総長の任期満了に伴う第二十五代総長選挙は、十九日に全学の教授・助教授・専任講師が投票を行い、開票の結果、吉川弘之・工学部教授(精密機械工学)が選ばれた。当日の就任受諾の記者会見において、吉川教授は、「有馬総長がこれまで行なってきた、東大を変えていこうとする姿勢を受け継いで、迷わずに進んでいきたい」と述べた。総長特別補佐として学内行政で重要な位置を占めてきた同教授は、大学院重点化、キャンパス整備などで有馬総長の基本的な政策を引き継いでいくものとみられる。今回の吉川教授の総長就任により、森亘総長、有馬朗人総長に続き三代連続の理科系出身の総長になる。(一部は号外ですでに報道済み) 

 

 選挙に先立ち十七日には、各学部・研究所の代表が本郷キャンパスに集まり、新総長の候補者を選んだ。候補者は石井紫郎・法学部教授(総長特別補佐)、伊理正夫・工学部教授、柴田翔・文学部長、本間長世・東大名誉教授、吉川教授の五人。

 

 十九日の選挙では、この候補者のうち一人が過半数に達するまで繰り返し投票を行い、三回目の投票で吉川教授が過半数を占めた。総長の任期は四年間で、再任は認められない。

 

 新総長の吉川教授は、一九三三年生まれ。東大工学部を卒業後、理化学研究所を経て、六十六年に工学部助教授、七十八年に同教授となり総長補佐、工学部長などを歴任。有馬総長のもとでは総長特別補佐を務め、新キャンパス計画や大学院重点化構想などで中心的役割を果たしてきた。とくにキャンパス計画については総長就任以後も柏キャンパス取得を含めた構想を積極的に進めていくことを記者会見でも明らかにしている。研究者としては、専門は精密機械工学。設計作業の自動化や、ロボットの自己保存機能などの研究がある。

 

記者会見の詳細について

 吉川教授は総長就任受諾後の記者会見を大学記者会室(安田講堂内)で行なった。

 

 会見では、学内の諸課題について「有馬総長が東大を変えていこうとした歴史の流れのうえに立って、大学改革をすすめていく」と有馬現総長の政策を受け継いでいく姿勢を明らかにした。特に大学院重点化に関しては、記者の質問に対し「前回の総長選では、院重点化をめぐって激しい対立があったが、ある程度学内の合意が得られているものと解釈している」と今後、さらに具体的にすすめていく方針を明らかにした。また、キャンパス問題に関しては、「三極構造を前提としたキャンパス整備計画を考えており、そのために柏の用地の取得を目指す」と述べた。

 

 院重点化、キャンパス計画の今後のすすめ方など、具体的な部分には踏み込まなかった。また、学内における新しい問題の提起もとくにしなかった。

 

 記者会見で吉川教授が強調したことは、大学の研究の環境は限界を超えており、科学研究費の増額を含めた大学への経済的な保証(原文ママ)の充実を望むということ、イデオロギーの有効性が失われつつある現在の社会において、大学がエネルギーを発揮し方向を示していけるようにすること、などだった。

 

 記者からは、教授の国大協会長への就任が確実視されることから、研究・教育機関としての日本の大学の国際的な位置、大学入試のあり方など「日本の大学運営の責任者」としての新総長の見解を求める質問が相次いだ。これに対して教授は、「大学をふくめ、教育全体のことはこれから考えていくつもりだ」と具体的な発言を避けた。