選考プロセスの透明性に一部教員から疑問の声が上がった2020年の総長選。結果的に、藤井輝夫理事・副学長が総長予定者に決定する形で幕を下ろした。さらにその後の検証委員会による検証では、藤井理事・副学長の選出は正当との結論が出された。今回の総長選考は何が問題だったのか。2020年の総長選を取り巻く動きをまとめた。(2021年1月8日更新)

今回の選考の流れ(東大のHPなどを基に作成)

4月17日~4月26日 第1回総長選考会議(メール審議)

議題
議長の選出について
議長の職務代行者の指名について
本年度総長選考会議の進め方について
選考開始の公示について

 

4月28日 総長選考開始の公示

総長選考会議内規の改正

  • 内規に記載されていた代議員会の構成員に関する記述及び意向投票の方法に関する記述を「別に定める」とし、まとめて「内規に関する了解事項」に移管
  • 経営協議会の推薦枠を「2人を限度」→「2人程度とし、前条の規定(引用者注:代議員の推薦枠に関する規定)による第1次候補者と重複することを妨げない」に変更
  • 第2次総長候補者の人数を「5名程度」→「3人以上5人以内」に変更。

求められる総長像を発表、経営力重視が明らかに

  • 「大学の存立基盤を強化」→「大学の財務基盤を強化」に変更
  • 「社会の各界から幅広い理解・協力を得ていく調整力と実行力」→「社会の各界から幅広い理解・協力を得て、大学を経営していく能力」に変更

小宮山宏選考会議長名義の談話発表

  • 「『求められる総長像』について、組織運営の能力・実績や、大学の財務基盤を強化し経営する能力など、教学と経営の長たる総長に求められる要件を一層明らかにする見直しを行う」
  • 「学内・学外から収集された情報をもとに、総長選考会議が主体となって進める選考の透明性・公平性を一層高めるために、選考プロセスの見直しを行う」とした

 

5月19日~5月20日 臨時総長選考会議(メール審議)

議題
総長選考日程の変更について

 

5月20日 総長選考の日程変更を発表

 

6月24日 総長と総長選考会議の懇談(第1回)

テーマ
最近の大学経営に関する問題意識の共有について

 

6月24日 第2回総長選考会議(オンライン開催)

議題
代議員会の開催方式等について
第1次総長候補者への通知等について
推薦人への推薦書作成依頼について
人材コンサルティング会社の利用について

 

7月7日 第1次総長候補者の推薦(代議員会)

代議員会では11人が選出

  • 相原博昭 大学執行役・副学長(学術長期戦略、グローバルキャンパス)(理学系研究科・理学部教授)
  • 石井洋二郎 名誉教授(元理事・副学長(教育、評価)、元総合文化研究科長・教養学部長)
  • 大久保達也 理事・副学長(教育、学生支援、施設)(元工学系研究科長・工学部長、現在も同教授)
  • 太田邦史 総合文化研究科長・教養学部長(同教授)
  • 梶田隆章 宇宙線研究所長(同教授)
  • 佐藤岩夫 社会科学研究所長(同教授)
  • 白波瀬佐和子 理事・副学長(国際、総長ビジョン広報)(人文社会系研究科・文学部教授)
  • 染谷隆夫 工学系研究科長・工学部長(同教授)
  • 福田裕穂 理事・副学長(総務、入試・高大接続、評価)(未来ビジョン研究センター特任教授)
  • 藤井輝夫 理事・副学長(財務、社会連携・産学官協創)(生産技術研究所教授)
  • 宮園浩平 理事・副学長(研究、懲戒)(医学系研究科・医学部教授)

 

7月22日 第1次総長候補者の推薦(経営協議会)

経営協議会からは永井良三 名誉教授(自治医科大学学長、元医学部附属病院長)を推薦

 

7月22日 第3回総長選考会議(オンライン開催)

議題
第1次総長候補者の決定について
総長候補者からの辞退表明の取扱いについて
人材コンサルティング会社の利用について
第2次総長候補者の選考方法等について

 

9月7日 第2次総長候補者の選定(総長選考会議)

 

9月8日 教職員向けの学内サイトにて、第2次総長候補者を告示

候補者は

  • 染谷隆夫 工学系研究科長・工学部長(同教授)
  • 永井良三 名誉教授(自治医科大学学長、元医学部附属病院長)
  • 藤井輝夫 理事・副学長(財務、社会連携・産学官協創担当)(生産技術研究所教授)

の3人

前回選考時は学内向けの告示と共に外部向けの記者発表を行ったが、今回は法務課より第2次候補者の氏名について「取扱いにご留意願います」という通知が教職員向けになされた。

 

9月30日 教員による第2次総長候補者への意向投票

午後、予定通り意向投票を実施。ただしZoomの通信障害で投票開始が遅れた他、システムトラブルで投票結果に一部教員がアクセスできない事態となった。

投票の結果、藤井輝夫理事・副学長が初回の投票で過半数を獲得した。

 

10月2日 総長選考会議による総長予定者の決定

藤井輝夫理事・副学長が総長予定者に決定

 

10月9日 五神真総長が総長選考のプロセスに対する検証委員会の立ち上げを発表

 

12月11日 検証委員会が検証結果報告書を東大に提出

藤井理事・副学長の総長予定者選出は妥当と判断
9月7日の選考会議で、宮園浩平理事・副学長に関する匿名の告発文に小宮山議長が言及した点は「妥当性を欠くといわざるを得ない」
小宮山選考会議議長が辞任の意向を示していることも明らかに

 

 

上がる疑問の声と選考会議の応答

2020年の総長選考については、第2次候補者告示後、一部の教員から選考プロセスの透明性と正当性・妥当性について疑義を唱える声が上がった。主な動きは以下の通り。

9月16日 田中純教授(総合文化研究科)を中心とする教員有志6人のグループが小宮山宏選考会議長に質問状を送付

9月23日 小宮山選考会議長より質問状に対する回答。田中教授らが特設サイトで質問状・回答を公開、さらに回答に対する再質問を公表。

9月25日 元東大理事有志が小宮山選考会議長宛に要望書を提出

9月25日 東大の学部・研究科長及び研究所長、センター長合計15人が小宮山選考会議長宛に要望書を提出

9月28日 田中教授ら有志、サイト上で第1次候補者の一覧を公表
9月28日 13時5分ごろ、小宮山選考会議長から再質問に対する回答があったとして公表

9月28日 午後、小宮山選考会議長と渡辺努選考会議長代行が15人の学部・研究科長らに対し要望書への回答を説明、議論が行われた。その後、学部・研究科長らのみの会合で「意向投票の予定通りの実施」「選考プロセスについてなお一層の検証の要求」を合意

9月29日 要望書提出に加わった部局長のいる部局で教授会構成員に対し前日の決定事項の説明がなされた
9月29日 経済学研究科、教育学研究科により行われていた第2次総長候補者の所信表明演説及び質疑応答の録画が、一部を除く全部局の構成員に対して配信される

9月30日 午後、予定通り意向投票を実施

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