五神真総長に代わる第31代総長予定者が決定するまでの過程を概観していこう。

 

 候補者は第1次候補者、第2次候補者の順番に絞られ、最終的に1人の総長予定者が決定されるが、第1次候補者を選出するのが「代議員会」「経営評議会」という二つの組織だ。代議員会は各部局の教授会構成員およびそれ以外の教職員選出の代議員が構成する組織。投票によって第1次候補者のうち10人以内を決定する。東大総長選考の過程の中で、唯一職員が参画することも特徴に挙げられる。もう一つの組織「経営協議会」は学内外の有識者から成る組織で、五神総長ら12人の学内委員と小宮山宏・元総長ら13人の学外委員から構成。総長選考においては2人程度の第1次候補者を推薦できる。

 

 第1次候補者が決定されてから総長選考の主役になる組織が、現在話題となっている「総長選考会議」だ。五神総長らの東大役員、部局長から成る「教育研究評議会」と経営協議会から8人ずつの委員が選出され、今回の総長選考では2代前の総長である小宮山宏氏が議長を務めている。前回、2014年の総長選考時には小宮山氏の1代前の総長である佐々木毅氏が議長であった。総長選考会議は9月2、4日に第1次候補者に対する面談を実施。面談を含めた調査によって9月7日に第2次候補者3〜5人を絞り込んだ。現在、田中純教授(東大総合文化研究科)らの教員有志の質問状などによってその透明性が問われているのは、主にこの9月7日の議論に関してだ。

 

 9月7日に絞り込まれた第2次候補者の氏名は翌日に教職員に対して告知された。前回の総長選考では学外向けにも氏名とプロフィールが公開されたが、今回はなし。東京大学新聞社の取材や田中教授らが発表した質問状によると、教職員に対しては第2次候補者の氏名の「取扱いにご留意願います」という小宮山議長からの要請があったことが分かっている。東京大学新聞社が複数の関係者に取材したところ、東大工学系研究科・工学部長の染谷隆夫教授、自治医科大学学長で東大医学部附属病院元病院長の永井良三名誉教授、藤井輝夫理事・副学長(財務・社会連携・産学官協創担当)の3人が第2次候補者となっている。

 

 第2次候補者が告示された後に実施されるのが9月30日の意向投票だ。投票権を持つのは教授、准教授および教授会構成員である講師で、職員に投票権はない。前回の総長選考における意向投票では「3回目までの意向投票で過半数獲得者が出なかった場合に上位2人による1回の決選投票が行われる」という形式が取られたが、今回の選考のために改定された「東京大学総長選考会議内規」第10条には「意向投票の方法については別に定める」とあるのみで、具体的な方法は一般公表されていない。

 

 意向投票に関してもう一点押さえておきたいのは、投票結果の扱いについて。前々回の総長選考では「投票での当選者を総長予定者とする」ことが内規で定められていたが、前回の選考では意向投票の結果を基に「求められる総長像」の内容も考慮した上で総長選考会議が選出することになった。そして今回はさらに「求められる総長像に照らし合わせた調査と意向投票の結果を考慮して決定する」方式に内規が変更。前回の選考では意向投票当日に総長予定者が発表されたが、今回は意向投票から2日後の10月2日に発表されることになっており、その間に総長選考会議が最終議論を行うとみられる。

 

 こうして総長選考会議によって選ばれた総長予定者は文部科学大臣からの任命を経て来年4月から正式に東大総長に就任。以後6年間の任期がスタートする。五神総長は9月14日に発表したメッセージで現在の「東京大学ビジョン2020」に代わる活動シナリオ「未来構想ビヨンド2020」を次期総長予定者とともに策定していく方針を示しており、五神総長が進めてきた路線が次期総長にも継承されると考えられる。

 

 学内外からさまざまな声が上がる東大総長選考。果たして次期総長となるのは誰なのか。

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