本文は画像下に掲載
文芸・映画評論家の副学長
吉川弘之現総長の任期満了に伴う第二十六代総長選挙は、七日に全学の教授、助教授、専任講師が投票を行い、開票の結果、蓮實重彦副学長(総合文化研究科教授、表象文化論)が選ばれた。蓮實副学長は同日、就任受諾の記者会見において「私のおかれている状況は抱負を語るのを禁じている」と語り、就任後の方針については明言を避けた。蓮實副学長は文芸評論や映画論で有名なポスト構造主義の旗手で、教養学部出身で総長に選ばれたのは第十六代の矢内原忠雄総長以来。(本紙では選挙当日に号外を発行したため、内容に一部重複があります。ご了承ください)
選挙に先立ち五日には、各学部・研究所の代表が本郷キャンパスに集まり、新総長の候補者を決めた。候補者は蓮實副学長、石井紫郎名誉教授、鈴木昭憲副学長(農学生命科学研究科教授)、西尾勝法学政治学研究科教授、矢崎義雄医学部長の五人。
七日の選挙では、一人が過半数に達するまで繰り返し投票が行われたが、三回の投票でも決まらず、三回目の投票で上位一位、二位を占めた鈴木、蓮實両副学長の決選投票となった。その結果、四回目の投票で蓮實副学長が過半数を占めた。総長の任期は四年で再任は認められない。
新総長の蓮實副学長は一九三六年生まれ。六〇年に東大文学部仏文科を卒業後、七三年教養学部助教授を経て、八八年に教授。九六年より現職の総合文化研究科教授。九三年から九五年にかけては教養学部長として駒場寮問題を指揮し、廃寮強行路線をとった。九五年より副学長(在任中)。
フローベル研究で出発し、渡仏中にフーコーやバルト、ドゥルーズらのフランス現代思想をいち早く紹介した。文芸評論のほか、映画論、野球評まで独自の視点で考察し、構造主義批判を展開した。『オペラ・オペラシオネル』や『小説から遠く離れて』『監督/小津安二郎』など多くの著作があり、独特の文体は若手批評家にも影響を与えている。
記者会見の詳細について
蓮實副学長は総長就任受諾後、記者会見を行った。会見では冒頭、「感想と抱負と」との質問に対して、「ある種の喜びを感じています。といいますのも、最初にどんな質問がくるか、ある人とカケをしておりまして、かなりもうけさせてもらったからです」とかわした。理科Ⅲ類の入試に面接が導入されることにも触れて、「同じ年代で一斉に入学して卒業するという単調さは改善されなければならない」との見方を示し、さらなる多様化に向けて含みを残した。
また、柏キャンパス構想については「キャンパスは一つより二つ、二つより三つあった方がよい」とし、さらに推進する構えだ。