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宮園教授と決選投票 大学院の改革掲げる
濱田純一総長の任期が来年3月末で満了することに伴う総長選が11月27日に行われ、五神真教授(理学系研究科長・理学部長)が事実上、第30代総長に決まった。文部科学相の任命を受け、正式に就任する。第2次総長候補者は5人で、決選投票となった4回目の投票で五神教授が有効投票数の過半数を獲得した。任期は来年4月~2021年3月の6年間で、再選はできない。記者会見で五神教授は「東大を、さまざまな人が協力して新たな知を生み出す『共創的プラットフォーム』にしたい」と就任後の展望を述べた。
次期総長予定者の決定に伴い11月27日午後8時半から開かれた記者会見で、五神教授は次期総長に選出されたことについて「大変身の引き締まる思いだ」と語った。五神教授は記者会見の冒頭で、グローバル化が加速する社会について言及。その社会で生じている問題の解決に必要な知や人材を生み出すことが東大の使命だと語った。
その上で東大の学生には「大きな夢を持って挑戦者として、東大で研鑽(けんさん)を積んでほしい」と期待した。具体的に身に付けてほしいこととして▽原理に立ち戻り自分の頭で考える力▽困難に直面しても諦めないで考え続ける忍耐力▽自ら新しい発想を出す創発的な力▽自らを相対化できる広い視野―の四つを挙げた。
五神教授は東大を「こういった力を鍛える道場」と表現。東大が「世界トップレベルの学問」を提供することで、学生が研究の最前線で感じられる興奮と喜びを体験し、自己を成長させることが理想だと話した。「そのための環境整備が、総長としての最も大切な責務」としている。
さらに五神教授は東大を、さまざまな人が協力して新たな知を生み出す「共創的プラットフォーム」にしたいと強調。東大の強みである研究を強化し、世代や国などの枠組みを超えた連携をしながら価値創造をしていきたいと話した。
そのために最初に着手することとして「世界に通用する卓越した大学院を作る」と掲げた。五神教授は昨年度まで副学長として、大学院の改革などを担当。特に研究の分野の若手のポストが貧窮している問題を取り上げ「博士人材を教育する仕組みを整備したい」と語った。
現在の東大が抱える課題についてはその他に、男女共同参画や研究不正の問題に言及。研究不正の問題に対して「科学と学術の信頼を固持するために、研究倫理と規範の徹底が最重要の課題だ」と述べた。
総長選考会議議長の佐々木毅・元総長は、五神教授を次期総長予定者に選んだ理由について「五神教授は、今回の総長選に向けて新たに策定された『求められる総長像』で示された資質・能力を十分に持っている」などと説明した。
今回の総長選では9月に、代議員会と経営協議会が第1次候補者10人程度を推薦した(結果は非公表)。第1次候補者に対し総長選考会議が、大学の将来構想や経営方針などを聞き取り調査。11月6日に第2次総長候補者として五神教授に加え、江川雅子理事、長谷川壽一理事・副学長、宮園浩平教授(医学系研究科長・医学部長)、大和裕幸副学長が選ばれていた。
投票に際しては東大の教授、准教授、教授会構成員である講師が選挙権を持った。3回目の投票でも有効投票数の過半数獲得者が現れず、4回目は五神教授と宮園教授の決選投票に。五神教授が894票、宮園教授が705票を獲得した。その後の総長選考会議で投票結果を基に審議がなされ、五神教授が次期総長予定者に決定した。
五神教授は、1957年生まれの57歳。武蔵高校から理Ⅰに進学後、理学部物理学科に進学した。
83年に理学系研究科博士課程を中退し、同年理学部助手。88年工学部講師、90年同助教授、95年工学系研究科助教授、98年同教授、05年総長特任補佐(~07年3月)、10年工学系研究科附属光量子科学研究センター教授、同年理学系研究科教授、12年副学長(~14年3月)を歴任した。本年度4月からは、理学系研究科長・理学部長に就任。現職について五神教授は、東京大学新聞社の取材に対し「制度上、本年度でやめることになるだろう」と話している。